快闘キッドのメモ帳

文学作品、翻訳作品、自作小説等の保管庫

仮面ライダー・エロス

これも、m3.comに書き込んだショートショート

 

エロスはギリシャ神話に登場する恋と性を司る神であり卓越した力を持っていた。
エロスの風貌は端正な顔立ちで見事な頬髭を蓄え、背中には大きな翼を持った屈強な男だった。

にもかかわらず恋と性をつかさどる神と呼ばれる所以は、エロスの持つ「金の矢」と「鉛の矢」の力であった。

「金の矢」に射られた者はその時に見た女性を恋焦がれるようになり、「鉛の矢」に射られた者はその相手を毛嫌いするようになるからである。

エロスはしばしばこの矢で人や神々を撃って遊んでいた。
ある日ゼウスの息子 アポロンは弓矢で遊んでいるエロスを馬鹿にした。それに激怒したエロスは「金の矢」でアポロンを、近くで川遊びをしていた河神ペーネイオスの娘 ダプネーを「鉛の矢」で射抜いた。

そのせいでアポロンはダプネーに求愛し続け、ダプネーはアポロンを頑なに拒絶しつづけた。
追うアポローンと逃げるダプネーをエロスは笑いながら見ていた。


ついにアポロンは河の畔にダプネーを追いつめいざ自分のものにしようとしたその時、ダプネーはアポロンから逃れるために、父(河の神)に自らを月桂樹に変えてもらった。
あと一歩のところで月桂樹に変えられたダプネーを見てアポロンはひどく悲しみ、その愛の永遠の証として月桂樹の枝から月桂冠を作りいつも身に着けた。

世界征服を企む謎の国際的秘密組織 ショッカーは、エロスの持つ能力に目を付け、絶世の美女プシュケ を仮面ライダー・プシュケに改造しダプネーに変身させて、悲しみに落ち込んでいたエロスのもとに送り込んだ。
ダプネーに変身した仮面ライダー・プシュケの姿を見て大喜びで駆け寄り抱きしめたその時、愛しいダプネーが仮面ライダー・プシュケの姿に戻った瞬間、驚いたエロスは思わず手に持っていた「金の矢」を落とし自分の足を刺してしまった。


さあ、祝え、かくして仮面ライダー・エロスの誕生だ。